波動

2024.10.25

若い頃、水泳選手として100m自由形を専門に競技生活を送っていた。この経験は、今でも私の思考の基盤となっている。

もう15年も前になるが、金融市場を観察していて気づいたことがある。一般的なテクニカル分析や経済ニュースを追うことよりも大切なものは「波」を感じ取る能力ということだ。学生時代に何時間も何kmも泳いだプールの中で体得した波との共存が、今は違う形で意味をなしている。

また、市場の動きは音声データの波形にも似ている。大きなトレンドはWAVファイルの波のように解像感豊かで滑らか、日々の細かい値動きはMP3のような圧縮データのように見える。どちらにも必ず中心となる基準線が存在し、この中心線こそが本質であり、それを常に意識することで物事の本質を見失わないでいられる。馬鹿みたいな単純移動平均では、当然遅れが生じてしまうが、リアルタイムの中心線を感じ取ることができれば、それは生のデータとして私たちの人生における重要な指針となり得ると思っている。

また違う視点として、市場はスポーツに似ている。水泳選手時代、私は水の抵抗と向き合いながら、同時にその力を利用することを学んだ。今、市場を観察する時も同様、事前の分析と準備は練習に相当し、実際のザラバでの意思決定は、まさにレース本番のようだ。論理的な分析で方針を定め、その上で直感を働かせる。これは水と一体となって泳ぐことに通じている。

この考えは金融に限らず、人生全般に当てはまると考えていて、現在の私にとっては何よりも大切な心得だ。資金の流れも、社会の動きも、すべては波動として捉えることができる。成功者を過度に崇拝する必要はない。耳障りの良い先人の名言に感化されなくてもいい。なぜなら、彼らもまた波に乗っているだけだからだ。大切なのは、その波の本質を理解し、自分自身が自然な流れに身を任せることだ。

人は往々にして波に逆らおうとする。現状を否定し、無理な目標を立て、自然な流れに抗おうとする。しかし、本当の強さは波を受け入れ、それに乗ることにあるはずだ。かつて若かりし私がプールで学んだように、波に逆らうことは無駄な力の消耗にしかならない。

波に身を任せることは、決して受け身になることではなく、それは自然の摂理を理解し、寄り添いながら、最適な未来を選ぶ積極的な判断であり、生き方なのだと強く信じている。

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虚像

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